#33 NLH Legacy 優勝 内田亘さん インタビュー

 

SPADIE 39th

#33 NLH Legacy

内田亘さん選手

 

優勝おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか?

ありがとうございます!本当に心から嬉しいです。大型大会には以前からずっと出場してきましたが、毎回チップはしっかり持てているのに、結果としては9位や8位といった惜しい順位にとどまることが多かったんです。自分としては“今日は行けるぞ”という感触がある日でも、最後の最後で勝ち切れないことが続いていました。インプライズやファイナルテーブルまでは比較的安定して行けていたので、周りからも『そろそろ優勝してもいいんじゃない?』と言われることが多かったんですが、それでもなかなか優勝だけは届かなくて。自分でも“優勝が遠いな”と感じていました。だから今回、こうして実際に優勝という結果を残せたことは、自分にとってものすごく大きいです。ずっと課題として残っていた部分を一つ乗り越えられたような気持ちもありますし、ようやく努力が形になったという安堵もあります。今日は本当にめちゃめちゃ嬉しいですね。

今回のトーナメントを振り返って、印象的だったことは?

Day 1もDay 2も、最初から最後までアベレージの4倍くらいのスタックをずっとキープできていたところですね。普段の大型イベントだと必ずといっていいほどどこかで苦しい時間帯が来るんですけど、今回は本当に動くたびに噛み合ってくれたというか、展開に逆らわず自然とチップが増えていきました。序盤は特に、フロップの方向性や相手のレンジとのぶつかり方が良くて、ベットしたところでしっかり取れる、ショウダウンに行っても強い、といった場面が続きました。大きく無理をしなくても勝手にスタックが積み上がるような感覚で、精神的にもかなり余裕を持ってプレーできていたと思います。Day 2に入ってからもその流れは大きく崩れず、危険なスポットに無理に踏み込む必要もなく、ハンド選びやレンジ調整も落ち着いて判断できました。トーナメント全体を通して、ここまで一貫して安定した状況を維持できたのは自分の中でもかなり珍しかったですね。

Day 1通過時のスタックはどれくらいでしたか?

137万でした。ブラインドが6,000/12,000のタイミングだったので、全体チップリでの通過です。トーナメントの進行状況やテーブル構成を考えても、自分が主導権を握りやすい位置にいたので、翌日のDay 2に向けてもかなり良い形で入れたと思います。

チップリーダーでの進出だったんですね!
Day 2イベントに向けて、何か対策は立てていましたか?

最初に必ずやるのは“人間観察”ですね。テーブルに着いた瞬間から、どういうプレータイプの人が多いのか、どこがアグレッション高めなのか、逆にタイトに構えているのは誰なのかというのをチェックしています。いきなり大きく動くのではなく、まずは周りを見て情報を集めて、それをベースにして自分のプレーを組み立てていくようにしています。6年間プレーしてきて、自分の中ではもう“最初のルーティーン”みたいになっているんですけど、相手のクセとかアクションのテンポ、ショウダウンに出てくるハンドの傾向を見るだけで、その人がどういう場面でギアを上げてくるのか、どこが弱点なのかがある程度わかるんですよ。そこが自分のスタイルに一番合っているというか、数字だけじゃ説明しきれない読み合いが自分は好きなんだと思います。

バブルラインではどんな展開でしたか?

63位から入賞で、66位のところでH4Hに入ったんですけど、そのタイミングで3人をすべて僕が飛ばしました(笑)本当にツイていて、ちょうどその場面で何度もプレミアハンドが入ってくれたんです。普段のバブルだと、慎重にいきたい人や逆に攻める人が混ざり合って、場の空気も独特になるんですけど、この日は自分の手がしっかり強い状況でアクションが回ってくる場面が続いて、自然と攻めにいける状況が整っていました。プレミアが入っているのに相手からは“アグレッション高めに攻めてきているだけだろう”と思われやすい場面でもあり、そこがちょうど噛み合ってくれた形ですね。

3人飛ばしはなかなかできるものではありません。

そうですね。相手も『これはブラフだろ』という読みで突っ込んできてくれていたので、こちらが本物を持っているタイミングと相手の判断がたまたま一致してくれた部分も大きいと思います。プレミアが続いたことに加えて、周りの印象とのギャップを上手く利用できたのも良かったです。結果的にそこで大きくスタックを増やせたので、その後の展開にも余裕を持って入ることができました。

ファイナルテーブルに入ってからはどんな状況でしたか?

ファイナルテーブルに入った直後は、正直かなり苦しかったです。まず最初の数周は全然ハンドが入らなくて、プレーの主導権を取りづらい状況が続きました。それに加えて、チップを多く持っているプレイヤーにポジションを取られる場面も多くて、こちらがアクションしづらい時間帯が長く続きました。いつもの自分なら、そこでエアブラフを混ぜて強引に流れを取りにいくことが多いんですけど、そういう時ってアグレッションを上げすぎて、結果的に無駄なポットを作ってしまい、7位や8位で終わるパターンが本当に多いんですよ。でも今日はその反省もあって、“無理に動かない”という選択を冷静に取れたと思います。
自分では“温泉してました”って言ってるんですけど(笑)まさにその言葉の通り、焦って無理に動かず、耐えて耐えて状況の改善を待つようにしていました。これは普段の自分ならなかなかできないプレーだったので、今日の勝因のひとつだと思います。

耐えるという判断が功を奏したんですね。

そうですね。チップ量の余裕があったことも大きいですし、今日はずっと後ろで応援してくれていた仲間が2人いたので、精神的にも落ち着いてプレーできました。普段なら焦って攻めに走る場面でも、『今日は大丈夫、待てる』と思えていたので、その気持ちの部分がプレーにしっかり出たと思います。

ヘッズアップはかなり長く続きましたね。

はい、体感でも1時間くらいはやっていました。相手の方が本当に上手で、特にチェックレンジがかなり強いタイプだったので、こちらとしてもどこまで踏み込んでいくべきか判断が難しかったです。さらに、リンプにも強いハンドをしっかり混ぜてくるプレイヤーだったので、プリフロップからのレンジ構築が読みにくく、どこでどれだけバリュー寄りなのか、どこにブラフがあるのか、見極めに時間がかかりました。

その状況をどう突破したのでしょうか?

途中からは、ある程度こちらからアグレッションを上げて、弱めのハンドでもターンやリバーまでしっかり打ち切るようなラインを選びました。もちろんリスクはあるんですけど、相手が嫌がるタイミングを作れないと流れがこっちに来ないので、勝負どころではしっかり踏み込みました。
ただ、ヘッズアップが今日の中で一番神経を使いましたね。相手の技量も高く、こちらのアクションに対して常に正しい反応が返ってくるので、気を抜く瞬間がまったくなかったです。それでも最後まで集中を切らさず戦い切れたのは、自分の中でも大きな収穫でした。

ポーカーを始めたきっかけを教えてください。

友人に誘われたのがきっかけですね。やってみたら思った以上にハマってしまって、すぐにアミューズメント施設にも通うようになりました。その流れで自分でお店を始めるタイミングがあり、気づけばディーラーとしてもプレイヤーとしてもずっとポーカーに関わり続けています。

ポーカーのどんなところにはまっていますか?

はい、あのヒリつく感じがたまらないんですよ。特にDay 2やプライズが高い大会だと、1つのアクションの重みが全然違いますよね。そういう勝負どころの駆け引きが本当に楽しくて、自分がポーカーを続けている理由のひとつにもなっています。

普段はお店もされていると伺いました。

はい、千葉で『千葉KINGS Amusement Casino本店』と『千葉QUEENS Amusement casino千葉富士見店』の2店舗を運営しています。KINGSはどちらかというとトーナメントプレイヤーが多く集まるお店で、JOPTやSPADIEの店舗予選もやっているので、ガチでポーカーをやりたい人が多い印象ですね。一方のQUEENSは初心者向けで、ポーカーを覚えたいという方や、まずは気軽に遊びたいという方が多いお店です。敷居が低くて入りやすいので、千葉の学生さんもかなり来てくれています。

客層がきれいに分かれているんですね。

そうなんです。お店ごとにカラーが違うので、プレイヤー自身が自分に合った方を選びやすいと思います。KINGSでガッツリやる人もいれば、QUEENSでのんびり楽しみながら覚えていく人もいて、どちらの場所も千葉のポーカープレイヤーが成長していく場になっていると感じています。

初めて大型大会に出る方へ、何かアドバイスはありますか?

まず“ハートを強く”ですね(笑)絶対に緊張して手が震えると思うんですよ。でもそれは当たり前なので、気にしなくて大丈夫です。あとは、ちゃんと余剰資金を作ればマネープレッシャーにも負けないと思います。とにかく楽しむ気持ちを忘れずに参加してほしいです。

今後の目標についてお聞かせください。

そうですね。直近の大きな目標としては“海外挑戦”に踏み出すことです。お店の運営もあって、これまで海外に行くタイミングがなかなか取れなく、実はこれまで一度も海外大会に出場したことがないんです。日本国内では入賞率もかなり安定してきて、自分の中でもプレーの経験値が積み上がってきている実感があるので、次のステップとして海外でのトーナメントを経験してみたいという気持ちがずっとありました。まずはAPTのような、距離的にも心理的にも挑戦しやすい大会からスタートしたいと思っています。日本のプレイヤーも多く参加しているシリーズなので、初めての海外としてはちょうどいい環境かなと感じています。
そのうえで、最終的にはWSOPにも挑戦したいですね。世界中のプレイヤーが集まる舞台で、自分のプレーがどこまで通用するのかを試してみたいですし、プレイヤーとしても、お店の代表としても、海外での経験はすごく大きな財産になると思っています。結果云々というより、まずは経験として一度その場に立ってみたいという気持ちが強いです。
いずれにしても、いつか必ず海外のフィールドでプレーするという目標は変わらないので、タイミングを見ながらしっかり準備して挑戦していきたいと思っています。

熱い思いが伝わってきました。本日は貴重なお話を本当にありがとうございました!改めまして優勝おめでとうございます!

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ライター:Takuma
学生時代に"世界のヨコサワチャンネル"をみてポーカーを始めた。現在はアミューズメントポーカールームで腕を磨き、アジアを中心に各国のトーナメントにも挑戦中。タイ・マニラ・韓国などでの経験を重ね、総獲得賞金は約400万円。
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